プロフィール画面をご存じだろうか。エンドレスサーが内に設けられたスペースで、登録者が自由に自分のことをアピール出来る場所である。プロフィールを書く者、SSを書く者、他の冒険者と交流を図る者、その用途は多岐に渡る。

 いつのことだろうか、草原の国アーゼルに、ボケが2人現れた。彼らはすぐに意気投合し、兄弟の契りを交わしたという。その行動は日に日にエスカレートしていったが、彼らを止める者は居なかった。いや、誰も止められなかったのだろう。

 男の名前は悟兵衛(No.77)とグリルニック(No.180)。2人の男の間には、打ち合わせも、計画も、相談も存在しない。そこのあるのは信頼という言葉だけだ。

 これは、プロフィール画面という小世界の、アーゼルケーブルTVというローカル放送局で放映された、男2人のドラマの記録である。

※ 

悟兵衛パートの色  

グリルパートの色



読まずに戻る







学園もの野球コントをやらないか?


始まりはいつも雨。のち雪。


貧乏な我が学園は野球部の部費などない。
ゆえに雪を待って我が野球部は活動を開始する。
積もるといいな♪


石を中心に据えた雪玉。
配管工事の際にくすねた鉄パイプ。
ユニホームはおそろいの色の防寒具。


戦場はいつもにぎやかで、すこしだけ情けなくて・・・。


そして僕たちの物語は始まる。

野球部を代表する二人の変人の物語。





H2(変人2人)

「明日はとうとう、県下一の強豪校との対戦だ。
 はっきり言って、お前等に勝ち目は無い」

そう言って舞台中央で男は大げさな動きを見せた。
両手を開き、全体を押さえつけるような仕草。

「落ち着け落ち着け、確かに実力では劣っているかもしれん。
 だったら頭を使えば良いんだ。そこでだ、
 今日はお前らの考えてきたサインを
 試合でどうつかうか決めたいと思う」

ユニフォーム姿の男はそう言って机の上に
大きなスケッチブックを置く。

「まずコイツ!『監督が立てたバットの上で逆立ちしたら盗塁』
 できねえよ!キダムかよ!!俺にキダムは来てねえよ!」

拳を振り上げ男はスケッチブックをめくる。

「『ルージュで鏡にSAYONARAと書いたら別れのサイン』
 確かにそうだけど、野球関係ねえ!!!」


 *************************


「お疲れ様でしたー、今日も大爆笑でしたね」

「ああ……」

近づいてきた風采の挙がらない若い男が
ライターを差し出す。
ユニフォーム姿のグリルニックは、
スケッチブックを若い男に預け、
舞台裏のパイプ椅子に浅く座った。
程なくしてゆっくり、紫煙が
ライトに照らされ昇っていく。

(そろそろ……限界かな)

舞台では見たことのない2人組が
パフォーマンスをしていた。
観客から、大きな笑いが起こる。



(ここは、もうオイラを必要としていない。
 若い芽が育っている。)

煙草が飲みかけのウーロン茶の中に落ち、ジュッと音を立てた。


 *************************



「グリルニックさん、そろそろエンディングの
 MCスタンバイお願……あれ?」

先ほどの若い男が戻ってきたとき、
グリルニックはそこには居なかった。
舞台そでに備え付けられた
身だしなみをチェックする小さな鏡に、
赤いマジックで『A・BA・YO』と
書かれているが発見されたのは、
それから程なくしてのことだった。


前回のあらすじ)
故郷の宿場町に別れを告げたグリルニック。
新たな笑いを求めて彼がたどり着いたのは…



 *********************


草原の国アーゼル。
新進気鋭の若者達が戦乱の世を強く生きぬかんとする
活気ある国である。
グリルニックはアーゼルの酒場で暇を潰していた。
無人販売所で買ったバナナをぺろりと平らげ、
そっと床に置く。

これは布石だ。

何食わぬ顔でその場をいったん離れ、ゆっくりと戻る。
ベタなリアクション芸を取り、客の反応を見て
この国の笑いのセンスを測ろうとしているのだ。

グリルニックは意を決して左足を踏み出した。
その時である。

ずべしゃああっ!!!!

1人の獣人が皮を踏んで豪快に舞った。
彼は空中で一回転し、頭の頂点を床と垂直に落下する。
そしてそのまま倒れ込み、口から泡を吹いた。

酒場が崩れんばかりの大爆笑に包まれる。

「なんて奴だ……!古典芸でここまで笑いを取るなんてッ……!」

その時グリルニックは驚愕した。
久しぶりの高揚感だった。

悟兵衛との運命の出会いであった。

(続く)


(前回のあらすじ)
毎日喧嘩に明け暮れるグリルニック。
本当は悪い人じゃないと言うマネージャーとキャプテン。
あんな奴とは一緒に野球を出来ないと言うメンバー達。
一緒に野球をしようと説得を試みるのだが……

****************************

「野球なんかやらねえって言ってるだろ!」

そう言って土手を強く蹴るグリルニック。

「しかし、君の手は毎日ボールを投げ込んでいる手だ」
「近づくんじゃねえ!」

手を取ろうとする悟兵衛を軽くひっぱたく。

「グリルニック……」

アーゼルの酒場で出会って仲良かったあの頃。
5年の歳月は人をこうも変えてしまうのか。

「お前…昔はもっと熱い奴だったじゃないか!
 弱い物いじめは許さない、それが、なんでそんな
 ボロボロの制服に鉄パイプ……!」

「う、うるせえやい!」

涙ぐむ悟兵衛を見て、グリルニックはあわてて踵を返した。
そして全速力でその場から走り去る。
その時、ポケットから小さな紙が落ちた。

「これは……」

診療所のレシートと、
鉄工所の給与明細。

レシートには、グリルニックの母親の名が記されている。

「アイツ……!」

****************************

H2〜変態2人〜  次週へ続く


(あらすじ)
「野球なんかやらねえ!」「昔は熱かったじゃないか」「うるせえ!」
グリルニックが落としたものは診療所のレシート。彼の母親の名前も。
――お母さん、妊娠したのか!?

 ****************************

休憩時間を告げるサイレンが鳴る。グリルニックはさっさと弁当を平らげると工場の裏手にある広場へ赴く。ボロボロの硬球を手にして。

工場の塀を前にグリルニックは硬球を手にして向き合う。
塀にはミットを構える捕手と打者が。

「よし」

つぶやくと、大きく両手を振りかぶり全力の一球を投じた!

「!?」

だが直前に人影が横切った。放たれた球は戻せない。

「危ない!!」

力の限り叫ぶ。人影は、悟兵衛?



「ごふぅっ!」



避ける事をわずかに期待したが、
彼はわき腹に直撃を食らって悲鳴を挙げた。
そのまま倒れる。

「大丈夫か!?」

慌てて駆け寄るグリルニック。しかし……!

「……息を、してない――!?」



戦場に雪が降るのは、まだまだ先のことだった。

 ****************************

H2〜変態2人〜  次週へ続く?


(前回のあらすじ)
工事現場の裏手でおいちゃんを殺してしまったグリルニック。
警察の手を逃れて、とうとう思い出の沿岸までやってきた…。

****************************

「ハァ……ハァ……」

背中に担いだおいちゃんが雨に打たれじっとりと重くなる。
グリルニックは片手で前髪の水滴を拭うと、
静かにおいちゃんを地面に降ろした。

「約束通り…ひなげしの見えるこの丘に連れてきたぜ」

丘に立つ一本の大樹には、幹の中央に小さなキズがある。
これは、グリルニックと悟兵衛が
『アーゼル上方漫才大賞』で、審査員特別賞を貰った記念に
2人で付けた絆の証だった。

この木の下にトロフィーを埋めた。
いつまでも、初心を忘れないようにと。
忘れそうになったときは、掘り起こして眺めよう、と。
そして死んだときは、ここに埋めよう、と。

幼き日の思い出がよみがえる。

「今…楽にしてやるからな」

グリルニックはスコップを力強く握りしめた。
出来上がった穴においちゃんを横たえ、
土を静かにかけていく。


チャラッチャチャラー! チャッチャッチャ!!

突然、軽快な音楽が流れ始めた。 

「この曲は……!!?」


こうでぃっすいず すりらー!!! すりらーないっ!!


むくり、とおいちゃんが穴から起きあがる。

「う、うわあああああ!!」

グリルニックは両手を左右に振りながらダンスを踊るしか無かった。


************************
H2(変態2人) 続く…のか?


(あらすじ)
思い出の場所ですべてを終わらせようとグリルニックは穴を掘る。
横たえたおいちゃんへ惜別と鎮魂の思いを込めて彼は踊る。
しかし、死んだはずのおいちゃんがリズムに乗って踊りだした!

 ****************************

「ハァ……ハァ……」
「ハァ……ハァ……」

二人そろって息を切らせ始める。しかし踊りは終わらない。
お互いにお互いを見据えて一歩も譲らない構えだ。

(悟兵衛…!ブランクを感じさせないソウルフルなその動き、流石だっ!!)

(グリルニック、留まるところを知らないそのダンスの進化は
 いまだ健在か…ッ!!)

アーゼル代表ダンサーの座を賭けた壮絶な一騎討ち。
二人のダンス対決はまもなく10時間を越える。

ダンスミュージックは絶えて久しい。
今はこの地の潮風がその代わりを果たしていた。
いつ果てるともなく続く闘い。変化は、しかし、突然訪れた。

「ッ!?」

悟兵衛が、グリルニックが穴を掘る際に使った
スコップに足を引っ掛けたのだ。
懸命にバランスを立て直そうとするも体は無常にも崩れていく。

「!!」

悟兵衛が倒れる寸前、グリルニックが手を差し伸べた。
悟兵衛もまた、その手を伸ばす。

二人はそのまま何事もなかったかのように二人で踊り始めた。
優れたダンサー二人が、優れたダンスデュオとして生まれ変わったとき!

風が、波が、緑が、ありとあらゆるものが、
二人のダンスに魅了された瞬間だ。


そして審査員たちは悟った。

『二人は一つの存在なのだ』、と。


************************
H2(変態2人) 続?


(前回のあらすじ)
人気の無い丘はいつしか人だかりで埋め尽くされていた。
たまたま近くのバレエコンクールを見に来ていた審査員が
彼らに喝采の拍手を送った。
そして世界最大のバレエコンクール「ラ・ベルマドンナ」に
出てみないかという誘いを受けたのだった。

****************************

鼓動が波打つ。
このプレッシャーをグリルニックは知っていた。
いままで舞台に立つ前はいつもこの感じを楽しんでいた。

ちらりと横を見ると、自分と全く同じ面もちの男がいた。
そう、悟兵衛もまた、この重圧に身を任せているのだ。
根っからの役者じゃねえか、こんちくしょう。
グリルニックは薄く笑みを浮かべると、視線を戻した。

楽屋には、時計の秒針が時を刻む音だけが響いている。
次第に近づく時間。

「そろそろか……」

そう言ってグリルニックはトゥシューズに足を入れた。

「痛ッ!!?」

鋭い痛みを感じ、トゥシューズが手から床に。
こてん、と転がったシューズから、いくつもの画鋲が転がり出た。

「グリルニック!」

心配したチュチュ姿(白鳥付き)の悟兵衛が駆け寄る。
同じくチュチュ姿のグリルニック(黒鳥付き)は
涙目になってかぶりを大きく振った。

「アタイ、こんな足じゃ踊れないわ!もうダメよ!!」

その時である。
楽屋のドアが開いて巻き毛の麗しい婦人が
高笑いをしながら2人の前に現れた。

「いいザマね。グリルニック!」

「あ、あなたはお腸婦人!!」

突然現れたバレエ界きってのスター。
グリルニックは彼女の顔を見て、
悔しそうに唇を噛むのであった。


************************
H2(変態2人) 続?


(前回のあらすじ)
「あなたはお腸婦人!!」
お腸婦人の卑劣な罠によりグリルニックは足を負傷。
本番まで時間は残されていない。
どうする?どうなる!

************************

「グリルニック、歩けるか?」
「歩けなくはないけど、踊りはもう無理よ…」

バシッ!
悟兵衛がグリルニックの頬を叩いた音だ。

「酷いわ!アタイがもう使えないからって
 顔まで見られなくしようとするなんて!!」

「グリルニック、あなた忘れたの!?例えこの身が朽ち果てようと、
 舞台の上で輝いていたいって言ったじゃない!」

「ッ、それは…」

あのひなげしの見える丘で二人は新たな約束を交わしたのだ。

「我ら、生まれた日は違えども!」
「死す時は同じ日、同じ時を願わん!」

後の歴史書ではこの出来事をその場所にちなんで
『雛罌粟の誓い』と記述されることになる。
余談だが、試験において漢字を正しく書けず
点を取り逃がす学生が多数いたとか。

そして二人は舞台に向かう。
この踊りが長きに渡るバレエの歴史に変革をもたらすのだ。

「なっ…!」

お腸婦人が驚愕の声を、いや、会場のすべての人が
驚愕の声を上げたに違いない。


「こんな非常識な踊りが、でも――!」

舞台で二人は華麗に舞う。
グリルニックの足の負傷など最初から問題ではなかった。
二人は逆立ちしてその腕に足の代わりをさせたのだ。
腕と足の筋力にある絶対の差を、二人は軽く超えてみせた。

「馬鹿な!並の人間ではこのような踊りは不可能!」
「では我々が今見ている踊りは何なのです?」
「1000年以上の歴史を持つこのバレエに、
 ようやく革命が起きたのです。そうは思いませんか?」

審査員の戸惑いと興奮と驚愕と、
その中にあって二人を見出した審査員の一人は
誇らしげに二人を見つめる。

「彼らは世界を変える…」



世界最大のバレエコンクール「ラ・ベルマドンナ」、
その結果は大方の予想を覆したものとなった。

お腸婦人の5年連続優勝が
コンクール初出場の二人組によって阻まれたのだから。


************************
H2(変態2人) 続け


(前回のあらすじ)
世界最大のバレエコンクール「ラ・ベルマドンナ」を制した2人。
連日の公演が大盛況の中、2人は支配人の元を訪れた。

****************************

「本当に、行ってしまうのかね」

豊かな白い髭を蓄えた老人は寂しそうにそう訊いた。
悟兵衛とグリルニックは同時に頷く。

「支配人には本当にお世話になりました。けど…、オイラ達が
 こうして舞台に立っていたのにはある目的があったんです」
「そう、俺たちのダンス師匠を亡き者にし、道場までを
 壊滅に追い込んだ、ブラックハート軍曹を捜す為…」

2人の強い口調に老人は驚く。
そして静かに言った。

「そうか、ではお主等はダンス師匠の弟子であったわけか。
 なるほど、ならば即興であれだけ踊れるのも頷けるな……。」

「今日舞台に軍曹の部下が見に来ていることを
 確認したんです。 奴の後を付いていけば
 軍曹の居場所がわかる!」
「そこで俺たちのネオ・白鳥乱舞〜アボガドサラダは恋の味〜
 を軍曹にお見舞いしてやるんだ!!」

グリルニックと悟兵衛は拳を振り上げた。
その時である。
絹を引き裂くような悲鳴が彼らの耳をつんざいた。



急いで悲鳴のあった場所に駆けつける2人。
ぐったりしたお腸婦人を抱え黒服の男がヘリコプターで去っていく。
そして数人がこちらに銃口を向け立っていた。



「軍曹にあいつの弟子は全員殺せと言われているんだ」

「くっ!!お腸婦人をどうする気だ!!」

「彼女には我々の宣伝塔になってもらうのさ…。
 おっと、喋り過ぎたな。ここで死んで貰おう!」

黒服の男が引き金に指をかける。
グリルニックと悟兵衛は顔を見合わせ頷いた。



『ネオ・白鳥乱舞!!!』



2人の姿が空中で交錯し、まばゆい光を放つ!

「う、うわああああああっ!!」

一回転して頭から落下する悟兵衛と、
華麗に着地しようと無理な体勢をして足をひねるグリル。
そして倒れる黒服。
動けない男達はそのままその場で夜を明かしたという。


************************
H2(変態2人) 続くものなら


(前回のあらすじ)
ダンス師匠の仇をとるべくブラックハート軍曹の行方を追う二人。
やがて二人は軍曹が空の果て、宇宙コロニーに拠点を構える事実を知る。
二人はソラへ向かう――!

  米米米米米米米米米米米
  
「N70星雲第47宙域通過。……ッ!」

「な、なんてこった…!」

小型の宇宙船をネオ白鳥乱舞で強奪した二人は
ブラックハート軍曹の拠点へあと1光年と迫っていた。
しかし、その道中で銀河帝国とそれに対抗する共和国軍との
戦争に巻き込まれてしまった。
今、眼前では艦隊同士の砲撃戦が繰り広げられていた。
帝国軍はその数に物を言わせて共和国軍を終始圧倒しているが、
決定的な痛打を与えるには至ってはいない。


「共和国側には魔術師がいるな」

「やはりそう思うかい、おいちゃん?」

「ああ、あの艦隊の高度な連携は魔術師以外には不可能だ」

「しかしこんなところで足止めを食うわけには」

「仕方ない、強行突破だ」


     ――――――――


「陛下!その体では…」

「ならぬ。余が向かわねば誰があの魔術師を止めるのだ?」

「皇帝陛下、近くを所属不明の小型艇が航行中との報告が」

「何、まさか哨戒艇か?だとしたら厄介だ。拿捕するように伝えろ」

「はっ!」


     ――――――――


「うああああ、どうしようグリちゃん!」

「おいちゃんしっかり!強行突破はおいちゃんが言い出したんじゃないか」

「どうして止めてくれなかったんだよぅ!」


二人の乗った小型艇の後ろを帝国の艦隊が追っていた。
二人の船が皇帝陛下のいる艦隊の傍を通ったのが原因とは
知る由もなかった。
そのさまは、見ようによっては小型艇を先頭にして
突撃を行うようにも見えた。その結果――


     ――――――――


「軍曹殿!例の弟子どもが大艦隊を引き連れて当地へ進行中!!」

「馬鹿な!あの小童どもにそんな力などあるものか」

「しかし実際に…」

「!!」

「どうしますか?」

「くぅ、小童どもの執念を甘く見ておったか。
 無駄死をする事はない、投降しろ」

「……了解」


     ――――――――

幸運な誤解が重なりブラックハート軍曹を捕える事に
成功した二人であった――。


  米米米米米米米米米米米

H2(変態2人) 宇宙戦争編完?

今回の放送は、アンケート結果をふまえて書かれた意味不明編となっています。意味不明な文章が続きますが仕様ですのでご了承下さい。





偶然の連続により宇宙戦争を解決した悟兵衛とグリル。
共和国の姫であるお腸婦人と結婚して欲しいと
皇帝からの申し出を受け、その権利をかけて
二人は決闘をすることになったのだった。


肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉


「また、おいちゃんと闘うことになるなんてな」

グリルニックはあてがわれた一室のベッドに横になり
そう呟いた。2秒に1回窓が割れる音がするめざまし時計を
壁に叩きつけ、その破片をひょいぱく、と口に放り込む。
これが共和国での主な食事だった。今日はソーセージ味だ。

明日の決闘を控えて、グリルニックは興奮していた。
興奮のあまり空が飛べそうだった。いや、飛べた。
なぜなら商店街で空を飛ぶ靴を買って、それを手にはめていたからだ。
あべこべの世界ではすべてがあべこべで、このままではいけないと
グリルニックは思った。
そう思った瞬間、こんなことを考える脳みそがいけないのだと思った。
グリルはすぐに脳みそを池に投げ捨てた。
頭が空っぽでは、動けないので、
ビデオクリーナーを頭の中に入れた。

「あれは、猫です」

「それは、鉛筆です」

「これは、テレビです」


指をさし、声を出しながら一つ一つ物を確認していく。
ビデオクリーナーがグリルニックの頭をキレイにして、
どんどんと新しい情報が流れ込んできた。


「あれは、鳥ですか?」

「いいえ、あれは魂です」

グリルの確認を否定したのは目の前に立つ男だった。
男の脳みそはCDクリーナーに見えた。


「あなたは誰ですか?」

グリルニックは訊いた

「私は誰です」


男は答えた。


「いいえ、あなたは悟兵衛です」

グリルニックは言った。

――――――――――――

「引き分け、じゃな」

「陛下、それでは」

「結婚の話は無しじゃ。あの者たちを元居た世界へ
 返してやりなさい」

「はっ!」

コロシアムの最上段で見ていた皇帝は、その場から去った。


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H2(変態2人) 行けるところまで

アンケートにご協力下さった方ありがとうございました。
おいちゃんを困らせる企画は引き続き募集しています。

この呼びかけは本放送当時のものであり、現在おいちゃんを困らせる企画を募集しておりません。


前回のあらすじ
グリルニックと悟兵衛の活躍により人類の争いは終結した。
お腸婦人を嫁に、と話が持ち上がるも
「婦人っていうからにはもう旦那さんがいるんじゃ?」
ということでお流れに。
その矢先、外宙から侵略者が現れる。

  ********

「我々は知的遊戯でその版図を拡大する事こそ紳士的であると考える」

侵略者から声明が届く。

要するに、武力制圧は優雅さに欠けるので
知恵で勝負しよう!ということらしい。
先の戦争で疲弊していた地球側はその提案を受け入れた。


「そして地球代表に選ばれたわけだが何をするんだろう?」

「グリちゃん。今連絡が来たけどカルタで勝負だって」


       ―――

カルタ星人(仮)と会った二人は驚いた。
自分たちと大きく変わらないが、
その指先は鋭利な刃物のように尖っていた。

この件に対して公平な戦いが行われない恐れがあると
地球政府が抗議するも
「我々の種族的特長を冒涜した著しく不適切な発言である」
と反論されそれ以上の追求は断念された。

       ―――

『かき食えば 腹下すなり 夏季の牡蠣』

「取った!」

悟兵衛がすばやくカルタを手元にさらおうとするが
カルタ星人の鋭い爪が悟兵衛の手に突き刺さる。

「ぐあっ」

痛みに手をかばう隙にカルタはカルタ星人のもとへ。

「その爪は卑怯じゃないのか!」

グリちゃんが抗議の声を上げるも「我々の種族的特長を(略)」
と言われてはどうしようもない。


「おいちゃん交代しよう。その手じゃもう…」

「グリちゃん。俺がこれ以上のリードを許さないから、後半戦は頼む」

血に染まる手を掲げると悟兵衛は親指を、
弱々しくはあったが立ててみせた。
その後は悟兵衛の悲鳴が、呻きが、断続的に続いた。


『クラスチェンジしようとしたら いまだに町に戻れない』

前半戦最後の一枚が読み上げられた。
悟兵衛は動かない。しかし…

「カルタがない!?」

カルタ星人が戸惑う。

グリルニックは見た、悟兵衛の魂がカルタをさらったのを。


「グリちゃん、後は任せた…ぜ」

悟兵衛の体が崩れ落ちた。
前半戦はカルタ星人がリード、しかし差はわずか2枚。

「おいちゃんの死、無駄にはしない…ッ!!」


  ********

H2(変態2人) 戦いの行方は――!?


カルタ星人の卑劣な手に窮地に追い込まれる2人。
一方その頃、忍者食の研究をしていたケンヂは
トキコおばさんの殺人バイオリンを目覚めさせてしまったのだった。


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「おいちゃん、一緒に闘おう…」

崩れ落ちた悟兵衛をグリルニックは背負う。
だらりと垂れ下がった両手からは、鈍い赤色に染まっていた。

一方、カルタ星人は薄笑いを浮かべ2人を見ていた。

「爪ガヨゴレテシマッタナ」

そう言っておいちゃんの血を床にこすりつけた。

「貴様……!!!」

グリルニックが静かに吠える。
カルタ星人は目を細めてその様子を愉しんでいるようだった。

『朝顔に 鶴瓶撮られて スキャンダル』

閃光が交錯し、カルタが飛ぶ。

(おいちゃん、君がこいつの爪を受けてくれたおかげで
 オイラはこいつの技を見切ったよ……!!!)

爪の間をジグザグにグリルニックの腕がすり抜け、
カルタの元へたどり着く。
これは毎日ヨガをやっていたからこその
体の柔らかさと、関節という人体構造を無視した
超人的な思考能力があってこそ出来る対抗手段だった。

そうは言ってもカルタ星人はカルタで飯を食っている、
いわばカルタのプロである。
いくらグリルが攻撃を受けないからと言って、
簡単に札を取らせてくれるほど甘くはなかった。

一進一退の攻防が続き、ついに最後の一枚。
読み手が、口を開いた。

『菜の花や 東に行けば 西日暮里』

「ジャマダ!!!」

「うわあああぁあああっ!!」

読み手が札を読むと同時に動いたのはカルタ星人だった。
爪がグリルニックを引き裂き、体がはじき飛ばされる。

「フフ、後ハ ユックリト札を取るだ……札が無イ!!?」

「ここに、あるぜ……」

弱々しい声に会場内の全員が注目した。
血まみれの手に、カルタが握られている。

グリルが飛ばされたときに背中から落ちた悟兵衛が、
2人のソウルパワーでカルタの上に落ちるという
荒技をやってのけたのだった。

満身創痍の2人が弱々しく同時に
親指を天に突き立てた。

歓声が、2人を包んだ。


肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉

H2(変態2人) 大宇宙カルタ編 第1部 完


今回の放送数日前に、グリルニックが結婚しています。





前回のあらすじ
カルタ星人との戦いに勝利した人類。
一方、殺人バイオリンにより家族を失ったケンヂは
伝説の耳栓を求め海を越える――!

   $$$$$$$

「うーん、よく寝たなぁ」

死闘の後自宅療養していた悟兵衛は一週間ぶりに目を覚ます。

「寝すぎだ。グリちゃんとこに顔出すかな」

      ―――

「お、ここだ。いつの間にか立派な家建てやがって」

悟兵衛はグリルニックの家の呼び鈴を押す。

「ほーい」

グリルニックが家の前の道路を二つに割って飛び出す。
マジン○ーみたいで素敵と思った。

「久しぶりグリちゃん」
「体は大丈夫かい、おいちゃん?」
「大丈夫さ、今すぐらぢお体操ができるぜ」

「お客さん?」

そこに飛び込む誰かの声。

「アルフェシアちゃん?なんでグリちゃんちに?まさか…結婚した?」
「結婚した」
「!!」

あまりの衝撃によろめくと悟兵衛は脇目も振らず走り出した。

「おいちゃん!?」

グリルの声が追いかけてくる。構わず走る続ける悟兵衛。
やがて二人は海の見える崖に着いた。悟兵衛はグリルに向けて言う。

「いつ結婚したの?」
「おいちゃんが寝てる間に」
「あたしのことはなんて?」
「同僚」
「あたしを弄んだのね」
「そうじゃない、と言ってほしいかい?」

キッと悟兵衛はグリルを睨み付ける。
しかしその後冷笑を浮かべ「彼女に本当の事を教えたらどうなるかしら?」
グリルの顔に焦りが浮かぶ。

「何を考えてる!?」「そうねぇ、あなたの予想と同じよ」
「何が望みだ?」「あなたの破滅」
「くっ、貴様ァ!!」

頭に血を上らせたグリルが悟兵衛に掴み掛かる。
目覚めてすぐの悟兵衛はグリルの手を振り払う事ができない。

「危ないわね、放しなさいよ!!」
「黙れ。そんな口を二度と利けないようにしてやる」
「キャアアアアアアアッ!」

悟兵衛の体が崖から海へと落ちていく。
グリルは自分の行動を信じられないかのように呆然とそれを眺める。

      ―――

それから数日後、とある浜辺に漂着した人がいた。
近所の住人が発見し近づく。

「死んでる?いや、息をしている!救急車を、まだ生きてるぞ!!」



   $$$$$$$


H2(変態2人) ナニコレ?


前回のあらすじ
悟兵衛を海へ突き落としてしまったグリルニック。
そして、ケンヂは幻の大地で自らの出生の秘密を
大賢者から聞かされるのだった。

 愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛

殺すつもりなどなかった。
頭に血が上って、気づいたら彼を突き飛ばしていた。

グリルニックは我が家へと帰ると、最愛の幼妻であるアルフェシアに
事の顛末をすべて報告した。
彼女はすぐに自首を勧めた。
そして、グリルニックもまた、それを望んだ。
すぐに、近くの警察へ電話をかけた。

(ウ〜 ウ〜)

自宅にパトカーの真似をする柳沢慎吾が近づいてくる。


「どうして、あんなことしたんですか」

「悟兵衛が…突然女言葉で喋りだしたものだから
 あまりの気持ち悪さについカッとなって……」

「うーん、それ、正当防衛!」

慎吾は言った。
あっはっは、と家庭内が明るい笑い声に包まれる。
こうして、事件はすべて解決したかに見えた。



━━━━━━━━━━━━━━━



「グリちゃん、やっぱり行くですのね。」

「うん、何だかんだ言っても、おいちゃんは
 オイラの相方以上友達未満だからね……」

こくり、とグリルニックは頷く。

「そう思って、お弁当を作っておきましたの」

アルフェシアはそう言って油揚げをグリルニックに手渡した。
油揚げは、HPを30回復することが出来るアイテムだ。

「ありがとうアルちゃん!」

「あと、燃えないゴミも出してきてくださいですの。
 それから、お隣に回覧板も回してきてくださいですぅ」

グリルニックは燃えないゴミと回覧板を手に入れた!

「それから、レンタルしてたビデオ返してきてくださいなの」

グリルニックは延滞2週間のビデオを手に入れた!

「それから……」

  ・
  ・
  ・

こうして、グリルニックはおいちゃんを捜す旅に出たのである。

(H2  終幕に向けてラストスパート)


前回のあやまち
生まれたこと
それとは別に出生の秘密を知ったケンヂは本当の両親の存在を知る。
戸惑うケンヂ、しかし殺人バイオリンの音色は彼を待ってはくれない…。


  人夢人夢人夢人夢


「ごーさんおはよう」

「あら、おはようございます。竹中さん」


悟兵衛はごーさんの愛称で流れ着いた町にいた。
世話になった地元の診療所に手伝いをしながら住まわせてもらっている。


「ごーさーん!」

「ヨウちゃん、どうしたの?」

「まだ女言葉なの?」

「ま、失礼ね。おすぎとピーコを敵に回したわよ?」

「怖ーい」

見事に地域の住民に溶け込んでいる。
しかし彼は記憶を失っていた。

「記憶は?」

「戻ったらいいな、ってところね」

「ごーさーん」

「はーい」

振り返る悟兵衛の顔面に硬球がめりこむ。
刹那、封じられた記憶が噴きあがる。
負けないくらいに鼻血も噴きあがる!

「あ、俺は?」

我に返った悟兵衛はきょろきょろ。

『ちぃ、我が術がこのようなことで破れるとは!』

「その声は、カルタ星人!」

『ふん、まあいい。貴様らはコンビでは強力だがソロでは脆い』

「お前が仕組んだ事か」

『貴様は死ににくいが、相方はどうかな?』


言いたい事を言うとカルタ星人はその気配を消す。


「グリちゃんが危ない!」

「ごーさん、よく分からんが急ぐのだろ?こいつを使いな」


竹中さんがママチャリを持ってきてくれた。

「ありがとう。でも、グリちゃんが今どこにいるか…」


悟兵衛は硬球に目を留める。
ひなげしだ、あの丘に。


「待ってろ、グリちゃん。今行くからな…ッ」

ギコギコギコギコ、ガクッ

「ああ、チェーンが外れた!」

ギコギコギコギコギコ、ガチン

「な!チェーンが切れた!?」


――急げ、悟兵衛。ひなげしの見える丘へ…

「タイヤが取れた!?」

――竹中さん、野ざらしにしてたママチャリはとても厄介です

 

  人夢人夢人夢人夢


H2(変態2人) 人の夢と書いて儚い


(前回のあらまき)
シャケ。
殺人バイオリンが本当の父親だと気づいたケンジ。
しかし運命の歯車は止まらない。
2人は全てを知った上で斬り結ぶのだった。


姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪




「大分時間がかかっちまった……」

ボロボロの皮のマント。
埃だらけの服。
靴底は片方無い。

ゴミを出し、ビデオを返し、村を2つ救い、
魔物の軍勢を倒し、溶岩をせき止め、その他諸々、
様々なことに巻き込まれすっかり遅くなってしまった。

おいちゃんは、きっとここに居るはずだ。

もはやその想いだけが、グリルニックを動かしていた。
一歩一歩、ひなげしの丘に近づいていく。

バレエ大会で優勝したこと、宇宙を救ったこと、
カルタ星人と闘ったこと、そして、自分を野球チームに誘ってくれたこと。
今その思い出が一つとなり、右手のサツマイモがこんがりと焼けた。

おいちゃん、今会いに行くよ…!

自然と足も速くなる。
だんだんと視界が広がっていく。
そして、その先に陰が見えた。

「おいちゃん!!」

グリルニックは駆け出す。
ぼんやりと浮かぶ陰は、近づくにつれ大きくなり、
グリルニックは目を疑った。


「マンション建ってるやん」

2人思い出の樹木はコンクリートに姿を変え、
ひなげしの丘は駐車場に。

時代の流れを感じることしか
グリルニックにはできなかった。


姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪姪


(H2  おいちゃんが終わらしたら終わりにしようか) 


前回のあ〜らら銭形のとっつぁん
待てー、ルパーン
殺人バイオリンに敗れ、倒れるケンヂ。
薄れ行く意識の中でケンヂは最後の切り札の存在を知る…

   銭銭銭銭銭銭銭銭

「な、なんということを…!」

約束の場所は新興住宅地と化していた。
悟兵衛は手当たり次第に資料をあさり、
この宅地開発にカルタ星人が一枚かんでいる事実を突き止めたのだ。

「おいちゃん、これはカルタ星人の挑戦状なんだ!」

新聞紙にくるまって路上生活をしていた悟兵衛は、
同様に路上生活をしていたグリルニックとばったりと出会ったのだ。

「俺たちの約束の地を汚しやがって」

「オイラたちを動揺させようって魂胆だ」

「いや、待てよ…」

ふと何かを思いついた悟兵衛はゴミ箱から回収した経済新聞を開く。

「やはりそうか」

「どうしたんだい?」

「俺たちはとんでもない勘違いをしていた。
 カルタ星人の狙いは他にあったんだ」

「!?」

「こいつを見てくれ」


地価情報を指して言う。
ひなげしの丘の地価がマンション建設前の10倍になっている。

「こ、これは…」

「そう、奴らの狙いは俺たちを動揺させる事じゃなく…
 土地の価値を操作して荒稼ぎすることだったんだよ!!」

「な、なんだってー!」

場を沈黙が包む。
僕たち自意識過剰だったね、テヘ☆という空気だ。


「おいちゃん」

「何、グリちゃん?」

「H2はこれからどうすればいい?」

「……」

「応えてくれ、おいちゃん!」

「おいちゃんにだって……分からないときもある」


気まずそうに悟兵衛は視線を逸らす。
新聞紙を体に巻いた二人に雪が静かに舞い降りる。

終焉を間近に控えた二人は
(まさか、打ち切り――!?)という思いに支配されていた……。



   銭銭銭銭銭銭銭銭



H2(変態2人) ラスト引き受けた。もちょいがんばろー


(前回のるっぱぁ〜ん)
奴はとんでもない物を盗んでいきました。
それは、あなたの通帳です。
ケンジはみんなの思いを背にうけて、殺人バイオリンを倒した。
しかし、彼の背後には黒幕が控えていたのである。


亀亀亀亀亀亀亀亀亀


「編集長!これいじょうは無理です!!」

「そうです!いくら視聴率が良いからってこれ以上伸ばしたら
 もう体を張るしかないじゃないですか!」


パイプ椅子には1人の男。
豊かな髭を蓄えたその人は、凄い剣幕でまくし立てる
2人の男を見ていた。

「深夜の枠でこの視聴率…。
 我がアーゼルケーブルTVも君たちを手放すわけにはいかんのだよ」


そう言って男は紙切れをヒラヒラと振ってみせる。
それは、契約書だった。
末尾にはしっかりと悟兵衛とグリルニックのサインが入っている。

「くっ!汚いぞ!」

「蟹食べ放題って言うからサインしたんじゃないか!」

「呪うなら己の愚かさを呪うんだな!!」

男はそう言ってゲラゲラと笑う。

「こうなったら実力行使しかない…」

2人は互いを見合わせこくんと頷いた。
あの契約書さえなければ、別のTV局に出ることも可能になるのだ。


「いくよおいちゃん! ネオ・白鳥らん……」

「そうはさせない!!!」

「うわああああ!!」

「グリちゃん!!」


飛び上がったグリルニックに鋭い爪が襲いかかった。
用心棒として雇われたカルタ星人が彼の背中を裂いたのだ。


「これから収録だ。今回はお前等が、
 地上げをしているカルタ星人の元へ行き、グリルが捕虜となり
 洗脳を受ける場面からだ。30分後にスタジオに来いよ」


編集長はそう言って去っていった。


「大丈夫かい?グリちゃん」

「ああ、これくらい平気さ。それよりおいちゃん、
 今日の収録……カルタ星人を倒そう」

「それじゃ、台本とちが……いや、わかったよ。
 自由になって、もっと大きなTV局の番組に出よう」


2人は頷く。そして親指を天へ突き上げる。


これが俺たちの最後の戦いだ……


2人はゆっくりとスタジオへ歩いていった。

亀亀亀亀亀亀亀亀亀


(H2 つづけ)


前回のつまらぬもの
また斬ってしまった。
ケンヂの前に現れた黒幕、それは彼の憧れの人。
悲痛な叫びも空しくお隣のミチコお姉さんとの死闘が始まる。


  貧貧貧貧貧貧貧


二人はボロボロになって横たわっていた。

「お前たちが反抗することは予測済み、無駄だったな」

編集局に控えているはずの編集長が
わざわざ二人の前に姿を見せてそう言った。
傍らに控えるカルタ星人が3人、それが誤算だった。
そして撮影は強行された。

「これ以上の撮影は無理だ。グリちゃんの背中の傷が」

「スケジュールがおしてるんだ、お前たちのせいでな。
 これ以上の遅れは許されん」

「あんたは…ッ!」

「おいちゃん、落ち着け」


グリルニックのいつにない強い口調に悟兵衛は口を閉ざす。

(今は耐えるんだ、チャンスはまた巡ってくるから)

(そいつは俺が嫁をもらう確率より高いか?)

(比較にならないほどにね)

(全盛期のマイクタイソンのパンチより利くな、そりゃ)

(ごめん)


それからチャンスを待つこと数日。
変化が訪れた。
撮影のために局を訪れた二人は言い争う声を聞きとがめ、
声の聞こえるほうへと向かった。


「馬鹿を言うな。反抗的だが彼らでないと成り立たない」

「構う事はない。視聴者は刺激的な変化を望んでいる」

「お前たち、最初から自分たちが主役を乗っ取るために
 私に取り入ったのか!?」

「貴様は自分が守られるに値する人物だと思っていたのか?」

「何ッ!」


言い争っているのは編集長とカルタ星人だ。
二人は物陰に潜み様子を窺う。

「どいつもこいつも生意気な口ばかり」

「貴様はもう少し利口だと思ったが、消すか」

「消すだと?」

立ち上る殺気を感じ二人は慌ててその場に駆け込む。


「お前たち…」

「ふん、勘のいい奴らだ」

「何をするつもりだったんだ?」

「他に気にかけることがあるぞ」

「どういう意味だ!?」

「交渉が決裂したので局ごと死んでもらう」


唐突な発言に理解が追いつかない。
それを悟ったか「あと10分で吹っ飛ぶぞ」と笑みを浮かべ
カルタ星人は素早く去る。


「爆弾か!」「ロケットか!」「布団か!」


三者三様の叫び、それはそうと時間は残されていない…。



   貧貧貧貧貧貧貧


H2(変態2人) 近々完結、したい


前回のあだ名

ブタゴリラって酷すぎない?
ミチコお姉さんとの戦いを征したケンヂ。
しかしそこには虚無しか残らなかった。


冨永一郎鈴木義司冨永一郎鈴木義司


アナウンスをかけ局の人間は全員避難させた。
あとは、カルタ星人の置いていった物を探すだけである。

ヒントは「吹っ飛ぶもの」


「ダメだ…隅々まで探したけど何も見つからないよ」

「グリちゃん、諦めちゃダメだ」


しかし、時計は無情にも時を刻み続ける。
約束の時間まであと1分。

このままでは、何かによって何かが吹っ飛んでしまう。
2人に焦りの表情が見えた。

「少し休もう、ヒーコーでも飲んで」

すっかり業界に染まった悟兵衛が
自動販売機のボタンを押す。

がたん、と落ちてきたのはコーヒーでは無く、箱だった。

「ん、なんだ?このコーハーは」

「おいちゃん、それダンバクじゃないのか!!?」

業界に染まったグリルニックは驚愕の表情を浮かべる。
2人はおそるおそる箱を開けた。

中には時計の様なものと酸素ボンベの様なもの。
そこから伸びた赤と青、二色のコード。

「おそらくこれは、アーカーとアーオーのどちらかをきると
 ブットビ系で俺等のチーイノがブツオダって訳だな」

「ああ。身も縮む思いだぜギロッポンチャンネー」

2人はごくりと唾を飲み込んだ。


残り時間はあと30秒。
今からカルタ星人に答えを聞きに行っている時間はない。


「どっちだと思う?」

「おやつには入らないな…」


バナナの議論はさておき、2人は覚悟を決めた。
そして、短刀を2人で持ち、
さながらケーキ入刀の様に振り下ろしたのだった。



車だん吉川島なお美車だん吉川島なお美


H2 ラストスパート


前回のあらすじ
過去はもう振り返らない…

   未来未来未来未来

勢い余って両方のコードを切った。気まずい時間が流れる。

『バックシマス、バックシマス』

箱から聞きなれた音声。ガッツ石松ではない。

「なんだ?」
「さあ?」

突如地鳴りが。地響きを立てて局が動き出したではないか。

「正面から見える景色が遠くなっていく……バックしてるのか!」
「やばいぞ、このまま進むと化学薬品工場に突っ込む!」
「局を止める為に」「ネオ白鳥乱舞だ」

二人の奥義が局の移動を食い止めた。安堵の息をつく二人、しかし。

「おいちゃん、工場が吹っ飛んできた!」
「カルタ星人が持ち上げてる!?」

巨大化した3人のカルタ星人が土煙を上げて工場と共に迫ってくる。

「グリちゃん、局をできるだけ遠ざけてくれ」
「無茶言うな!」
「俺が工場を止める」
「馬鹿言うな!」

グリルの言葉に応えず悟兵衛は懐から何かを取り出す。

ジェアッ!

悟兵衛が光に包まれながら巨大化する。その姿は大猿となった。

「おいちゃんがサイ○人だったなんて!」

悟兵衛は工場に突撃、3対1だが工場の動きが止まる。
だがカルタ星人の一人が鋭い爪で悟兵衛のすねをえぐる。


「グリちゃん、俺はもたない」
「おいちゃん!?」
「最後の手段を使う。ひなげしの約束は来世で果たすよ」
「オイラが白鳥乱舞で援護するから!」
「来るな!グリちゃんは嫁さんを泣かすような真似はするな」
「浮気なんかしてないよ!」
「へへ、そうじゃなくて。俺が吹っ飛ぶからさ」


グリルの言葉を待たず悟兵衛は白い輝きを放ち爆発した。
カルタ星人と工場を巻き添えに。
あとには何も残らなかった。

   ―――

グリルニックは悟兵衛の墓を訪れた。

「久しぶり。おいちゃんが好きだった結婚相談所のパンフ、持ってきたよ」

パンフの束を墓前に手向ける。

「今日はいいニュースがあるんだ。ひなげしの丘、野球場になったんだ。
 子供の遊び場を作れって住民運動起こしてさ。
 それから子供が生まれたんだ。おいちゃんの名前を一字もらったよ」

そこで言葉を切る。

「名前、ゴルフェニックって言うんだ」





   未来未来未来未来





H2 


企画 ニクハウス食品  スタジオ悟兵衛ピエロ


制作 アーゼルケーブルTV


出演 悟兵衛(No.77)

    グリルニック(No.180)  他


スペシャルサンクス ここまで読んでくださった全ての人々


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 H2〜変態2人〜をご覧頂きましてありがとうございました。

 ここからは、DVDをご購入下さった方のみの特典映像になります。

 主演した悟兵衛、グリルニックの素顔や、メイキング映像、そんなものはございませんが、H2制作に携わった2人が編集後記を寄せておりますのでお暇なときにでもお楽しみください。お楽しめるものなら!





踊るH2 THE MOVIE3

「予告編じゃあれだな、よし、本編にしてかっ飛ばすか!」

飛ばし過ぎました。
途中まで書いて「あのときのアンケート結果、
無駄にはできないな」と思い立つ。
さらに飛ばし過ぎました。

悟兵衛個人としては、やりたかったネタを
ほぼ完全に消化できたので思い残す事はありません。
これは遺書ではありません。

通常のお話二つ分以上のボリュームですが、
劇場版ならではということで納得してください。
とりあえず「納得」と言うときゃいいんです。
お偉いさんにはそれが分からんのです。

せっかくなので参考にしたモノをあげときます。
とはいえ、これで中身の話を推理しても役に立ちませんから。
むしろ、どうしてこれからあんな話になるんだよ!と思うのでは?


参考映画:「誘拐」(渡さんとか永瀬さんの出てたやつ)・「ネゴシエーター」
(エディ・マーフィー主演のやつ・原題のままでいいじゃん、と思ったがそれはそれ)

以上、またの機会があればやはりまた暴走すると思います。


某月某日悟兵衛記す



踊るH2 THE MOVIE3 はこちらからご覧になれます



H2 まさかり村の秘密 


おいちゃんが気合い入れてすごいの書いたので、
オイラも負けるわけには行きません。

H2は深夜にもかかわらず7%と言う高視聴率となり、
悟兵衛とグリルニックと言う二人の芸人が
一躍有名人になりました。
おいちゃんのカッ飛んだストーリー展開には
いつもヒヤヒヤしつつ、次どうしようと考える前に
酒を体内に取り込み、訳が分からなくなったところで
H2を書いていたのは公然の秘密です。


あとは、一発屋にならないように、頑張るだけです。


さて、映画となりました踊るH2 THE MOVIE3 も
ロングセラーとなり、大変嬉しい限りです。
好評を受けまして、悟兵衛とグリルニック主演作3作目の
制作が決定しました。

今回は二人の新たな魅力を引き出す、サイコホラー作品となっています。
参考にしたものは、「糸井重里」です。



某月某日グリルニック記す



H2 まさかり村の秘密 はこちらからご覧になれます



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